1 設問の確認
「上記6の閲覧の請求を拒むために
甲社の立場において考えられる主張」
「及びその主張の当否」
2 上記6の閲覧の請求とは
「DはAが仕入先からリベートを受け取っている疑いがあるため、
Aの取締役としての損害賠償責任の有無を検討するために必要であるとして、
直近3期分の総勘定元帳及びその補助簿のうち、
仕入取引に関する部分の閲覧の請求をした」
3 本問の検討事項
〔出題の趣旨〕
「設問1においては、
(1)Dによる閲覧の請求が会社法第433条第1項の会計帳簿の閲覧の請求に該当すること、
当該請求の要件等に言及した上で、
(2)当該請求が同条第2項第1号又は第3号の拒絶事由等に該当し、
甲社が当該請求を拒むことができるかどうか
について検討することが求められる。
4 会社法第433条第1項
〔採点実感〕
「本設問に答える前提として、
Dによる閲覧の請求が会社法第433条第1項の会計帳簿の閲覧の請求に該当すること、
当該請求の要件等に簡潔に言及することが求められる」
「会社法上の論点について検討するに当たっては、
その前提となる法的枠組みについて言及することが求められ、
そのような言及をしている答案には一定の評価を与えている」
「請求の理由を明らかにしているか否か、
請求の理由を基礎づける事実が客観的に存在することについての立証の要否、
閲覧対象の具体的な特定の要否等」
5 会社法433条第2項第1号又は第3号
(1)共通して高評価とされる答案
「会社法第433条第2項第1号及び第3号の拒絶事由の趣旨を明らかにした上で、
当該拒絶事由への該当性について、
問題文中の事実関係を踏まえて検討しているもの」
(2)第1号
〔出題の趣旨〕
「Dによる閲覧の請求が
会社法第433条第2項第1号の拒絶事由に該当するか否かを検討するに当たっては、
Dが、その権利の確保又は行使に関する調査の目的でなく、
D保有株式をAに買い取らせる目的で当該請求を行ったと認めることができるかどうかについて、
Dの言動等の事実関係を適切に評価した上で説得的に論ずることが求められる」
〔採点実感〕
「同項第1号の拒絶事由に該当するか否かを検討するに当たっては、
Dが株主の権利の確保又は行使に関する調査の目的でなく、
単にD保有株式をAに買い取らせる目的で
当該請求を行っていると認めることができるかどうかについて、
Aが仕入先からリベートを受け取っている疑いがあるため、
Aの取締役としての損害賠償責任の有無を検討するために必要であるとして、
会計帳簿の閲覧の請求をしている一方で、
自分は甲社に対して興味を失っており、
Aがリベートを受け取っているかどうかなどは
本当はどうでもよいと述べた上で、
AがD保有株式を買い取ることを求めていることなどの
Dの言動等の事実関係を適切に評価した上で
説得的に論ずることが求められる」
(3)第3号
〔出題の趣旨〕
「Dによる閲覧の請求が
会社法第433条第2項第3号の拒絶事由に該当するか否かを検討するに当たっては、
乙社の営む事業が
甲社の『業務と実質的に競争関係にある』
と認めることができるかどうかについて、
甲社及び乙社は
いずれもハンバーガーショップを営んていること、
甲社はQ県には出店する予定がないこと
などの事実関係を適切に評価した上で、
説得的に論ずることが必要となろう」
「さらに、Dが『~事業を営み、又はこれに従事するものである』
と認めることができるかどうかについても、
Dは、乙社の発行済株式の全部を有していること、
乙社の経営には関与していないこと、
乙社の代表取締役であるFと親子関係にあること
などの事実関係を踏まえて、
具体的に検討することが求められる」
〔採点実感〕
「会社法第433条第2項第3号の拒絶事由の趣旨を明らかにした上で、
当該拒絶事由への該当性について、
請求者に会計帳簿の閲覧によって知り得る情報を
実質的に競争関係にある事業に利用するなどの
主観的意図があることを要するか否かを、
理由を付して検討しているもの」
は優秀又は両行に該当する答案の例とされている。
「乙社の営む事業が
甲社の『業務と実質的に競争関係にある』と認めることができるかどうか
という問題と、
Dが『~事業を営み、又はこれに従事するものである』と認めることができるかどうか
という問題とを区別」すること。
6 その他に求められている答案
〔採点実感〕参照
「各設問に答える時間の配分にも配慮した上で、
各設問を通じて、
各論点とその前提となる書く法的枠組みについて、
バランス良く記述することが期待される」
「拒絶事由への該当性を検討するに当たり、
問題文中の事実関係を丁寧に認定した上で、
適切に評価している答案…は好印象であった」
「会社法上の論点について検討するに当たっては、
その前提となる法的枠組みについても
必要な範囲で言及し、
会社法上の基本的な条文又は制度を十分に理解していることを
答案上も明らかにすることが望まれる」
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