【司法試験】平成30年 民事系 第2問(会社法)設問2の(1)を出題の趣旨と採点実感から読み解く

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1 設問の確認

「上記13の本件決議1及び2についての各決議の取消しの訴えに関して、

Cの立場において考えられる主張及びその当否について、論じなさい」

 

2 本件決議1

(1)内容の確認

Cを取締役から解任する議案

A(300株)、B(250株)及びD(200株)の代理人Aが賛成したことにより、

可決(1000株分の750株)。

 

(2)Cが株主総会の決議の取消しの訴えを提起した経緯

「本件契約の内容並びに上記9及び12の事実を知ったC」

 

本件契約の内容 (1)~(3)

 

上記9の事実

甲社が、Gの丙銀行に対する融資契約に基づく借入金債務についての連帯保証契約を締結したこと。

本来は60万円を下らない保証料の支払いを受けていないこと。

 

上記12の事実

丙銀行がGに対して融資を実行したこと。

その融資金でGがD保有株式を譲り受け、株券の引渡しを受けたこと。

 

(3)株主総会の決議の取消しの訴えの枠組み

〔出題の趣旨〕

「利益の供与により、本件決議1が

株主総会の決議の方法が法令に違反した者(同法第831条第1項第1号)

と認めることができるかどうかについて検討することが求められる」

 

〔採点実感〕

「利益の供与に該当するとすれば、

そのことを理由として株主総会の決議の取消しが認められるか否か」

 

「利益の供与により、本件決議1が

株主総会の決議の方法が法令に違反したもの(会社法第831条第1項第1号)

と認めることができるかについて論ずるに当たり、

当該利益の供与がDによる議決権の行使に及びした影響を適切に述べているもの」

は優秀又は良好に該当する答案。

 

(4)法令違反(利益の供与)

① 対象行為

Ⅰ 〔出題の趣旨〕

「甲社がGから保証料の支払いを受けないで

Gの丙銀行に対する借入金債務について連帯保証したことが、

『何人に対しても』(会社法第120条第1項)という文言に照らして、

Gに対する財産上の利益の供与(同項)に該当するか否か

(同項の文言上、利益供与の相手方は誰でもよく、

元に株主であるものに限られない)」

 

〔採点実感〕

「自社の株式が譲渡される際に、

譲渡人による株主総会における議決権の行使を回避する目的で、

会社が譲受人の株式買取資金の借入金債務を無償で連帯保証したこと」

 

「『何人に対しても』(会社法第120条第1項)という文言に照らして、

財産上の利益の供与を受ける者は株主であることを要せず、

…と論ずるもの」は優秀又は良好に該当する答案。

 

Ⅱ 甲社がGから保証料の支払いを受けないで

Gの丙銀行に対する借入金債務について連帯保証することが

〔出題の趣旨〕

「D保有株式の売買契約が成立する前提となっており、

Dに対する財産上の利益の供与(同項)に該当するか否か」

 

② 株主の権利の行使に関し

(出題の趣旨〕

「当該利益の供与が株主の権利の行使に関してされたもの(同項)

ということができるかどうか」

 

「本件契約によれば、Dが本件株主総会には自ら出席しないで

Aを代理人として議決権の行使に関する一切の事項を委任することとされていた

といった諸々の事実関係に即して検討することが望まれる」

 

〔採点実感〕

Ⅰの構成の場合、「Dによる株主の権利の行使に関し、

Gに対して利益の供与を行ったと論ずるもの」は優秀又は良好に該当する答案。

 

「株主の権利の行使に関する利益の供与(会社法第120条第1項)の要件を適切に整理し、

特に財産上の利益の供与が『株主の権利の行使に関し』されたもの(同項)

ということができるかどうかという要件について、

株式の譲渡自体は『株主の権利の行使』ということができないが、

譲渡人による議決権の行使を回避する目的である場合には、

『株主の権利の行使に関し』されたものということができるという解釈を採った上で、

適切に当てはめをしているもの」は優秀又は良好に該当する答案。

 

3 本件決議2

(1)内容の確認

Aを取締役から解任する旨の議案 否決

 

(2)当時の状況

「Cが提案の理由としてAの不正なリベートの受取について説明しようとした。

これに対し、議長であるAは、そのような説明は議案と関連がないとして、

これを制止し、直ちに採決に移」った。

 

(3)株主総会の決議の取消しの訴えの枠組み

〔出題の趣旨〕

「本件決議2が株主総会の決議の方法が法令に違反し、

又は著しく不公正なもの(会社法第831条31位1項第1号)と認めることができるか」

 

(4)法令違反又は著しく不公正の法律構成

〔出題の趣旨〕

「CがAを取締役から解任する旨の議案の提案の理由を説明しようとしたところ、

議長であるAがこれを制止し、直ちに採決に移ったことを」

Ⅲ 「株主による提案理由の説明の拒絶として株主提案権の(実質的)侵害に該当し」とする構成

あるいは、

〔出題の趣旨〕

Ⅳ 「議長の議事整理に関する権限(同法315条第1項)の濫用に該当する」とする構成

 

〔採点実感〕

「議長であるAによりCによる説明が制止されたことを、

取締役の説明義務に関する同法314条との関係で、

同条の『株主から特定の事項について説明を求められた場合には』

という要件を全く考慮せず、

同条に基づく取締役の説明義務の不履行に該当すると位置づけようとする答案

…は低い評価を得るにとどまる」

 

「議長の議事整理に関する権限…の濫用に該当すると論ずる答案が多かった」

「議長の議事整理に関する権限(会社法315条第1項)の濫用に該当すると論ずる上で、

株主提案権の意義にも言及しているもの」は優秀又は良好に該当する答案。

 

(5)訴えの適法性

〔出題の趣旨〕

「判例は、ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは

不適法であるとしていること(最判平成28年3月4日民集70巻3号827頁)

を意識した上で、

その適否を論ずることが求められる」

 

〔採点実感〕

「株主総会の否決決議の取消しを請求する訴えが、

株主総会の決議の取消しの訴えの対象となるか否かについて、

株主総会の否決決議

又はこれを取消すことによって新たな法律関係が生ずるか否か

について言及した上で、論ずるもの」は優秀又は良好に該当する答案。

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