【司法試験】平成30年 公法系 第2問(行政法)設問2を出題の趣旨と採点実感から読み解く

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1 設問の確認

「B市長が本件申請に対して本件不許可処分を行い、

Aが本件不許可処分の取消しを求めて取消訴訟を提起した場合、

Aは、本件不許可処分が違法であるとして、

どのような主張を行うと考えられるか。

また、これに対してB市はどのような反論をすべきか、検討しなさい。

 

2 【検討会議の会議録】

総務部長⑳(この数字は発言者に関係なく何回目の発言かという意味):

次に、本件申請に対して、本件不許可処分を行った場合です。

…本日は、子の取消訴訟における本案の主張の検討をお願いします。

 

環境部長㉑:

環境部では本件不許可処分をする場合の処分理由として、

次のことを考えています。

(ア)本件墓地周辺の生活環境及び衛生環境が悪化する懸念から、

周辺住民の反対運動が激しくなったこと、

 

(イ)Dの墓地を含むB市内の墓地の供給が過剰となり、

それらの経営に悪影響が及ぶこと、

 

(ウ)本件事業所が本件土地から約80メートル離れた位置にあること、

 

の3点です。

 

弁護士F㉒:

(ウ)について先ほど検討しましたので、…検討を省略しましょう。

まず、(ア)について捕捉される点はありますか。

 

環境部長㉓:

Aは、本件墓地の設置に当たっては、植栽を行うなど、

周辺の生活環境と調和するよう十分配慮しているとしていますが、

住民の多くはそれでは十分ではないと考えています。

 

弁護士F㉔:

次に、(イ)についてですが、

本件墓地の経営は、B市内の既存の墓地に対して大きな影響を与えるのでしょうか。

 

環境部長㉕:

Dの墓地を含めて、B市内には複数の墓地がありますが、

いずれも供給過剰気味で、空き区画が目立つようになっています。

本件墓地の経営が始まれば、Dの墓地のような小規模な墓地は

経営が破綻する可能性もあると思います。

 

総務部長㉖:

では、これらの(ア)及び(イ)の処分理由に対して

想定されるAからの主張について、

本市からの反論を含めて、F先生に検討をお願いします。

 

3 設問2で問われていること(総論)

〔出題の趣旨〕

「論じられるべき…問題は、本件申請に対して不許可処分

(以下「本件不許可処分」という。)が行われ、

Aが、本件不許可処分に対して取消訴訟を争う場合、

Aが本件不許可処分の違法事由としてどのような主張をすることができるかである(設問2)」

 

「〔設問2〕は、Aが本件不許可処分に対して取消訴訟を提起した場合、

本件不許可処分が違法であるとしてどのような主張がなされるのかを問うものである」

 

「本件不許可処分の理由としてB市が想定している理由のうち、

本問で論じられるべきものは、

(ア)本件墓地周辺の住環境が悪化する懸念から、

近隣住民の反対運動が激しくなったこと

及び(イ)Dの墓地を含むB市内の墓地の供給が過剰となり、

その経営に悪影響が及ぶことである」

 

「これらに関して、B市の主張を踏まえて、検討することが求められている」

 

〔採点実感〕

(一応の水準で求められている論述があることを踏まえて)

「これに加えて、例えば、(ア)及び(イ)のいずれについても、

取り上げた主張に対する反論として想定される見解を踏まえて

主張の根拠について説得的な論述がされているもの、

それぞれの主張について根拠を複数挙げるなどして

多面的な検討がされているもの」

 

「会議録を読んで、問われていることに素直に答えてほしい」

 

「市長が反対運動を理由に不許可処分を行った点と

墓地の供給過剰の点のそれぞれにつき、

法的評価を加えた上でAの主張及びB市の反論を考えていくことが基本である」

 

「本件では、市長の裁量判断と絡めた上で論じられる必要があった」

 

「行政法の解釈枠組みに照らした上で事実関係を法的に評価していくことが望まれる」

 

4 (ア)について

〔出題の趣旨〕

「(ア)については、

単に近隣住民の反対運動が激化するということを理由とするにとどまるのであれば、

本件不許可処分の根拠としては認められないとの見解もあり得る一方で」

 

「B市の立場からは、法第10条1項が、墓地の営業許可につき

市長に裁量を認めていることを前提にして、

住環境の悪化を懸念する反対運動の存在を考慮することは適法との見解もあり得」

 

「これらを比較して論じることが求められている」

 

〔採点実感〕

「会議録に記載された(ア)の点について、

Aの主張として、

周辺の環境の悪化を懸念する近隣住民の反対を理由として不許可処分をすることは

他事考慮であって認められないこと」

 

「Aは環境に対する配慮をしていることからして

環境の悪化を理由として不許可処分をすることは

裁量権の範囲を逸脱すること」

 

「といったものを相応の根拠と共に挙げた上で」

 

「それに対するB市の反論を、

本件条例の規定の内容や法令の趣旨目的を指摘するなどして論じ」

ることが求められていた。

 

 

5 (イ)について

〔出題の趣旨〕

「(イ)についても、

B市内の墓地の需要を考慮して本件不許可処分を行うことは許されないとの見解と」

 

「B市の立場からは、墓地の公共性や墓地の経営の安定性を求める法や本件条例の規定から、

経営状態が悪化しないように、需給状況を考慮することは、

裁量の範囲を超えるものではないという見解もあり得」

 

「これらを比較して論じることが求められている」

 

〔採点実感〕

「会議録に記載された(イ)の点について、

Aの主張として、

B市内の墓地の受給状況を考慮して本件不許可処分を行うことは他事考慮に当たる

といったものを相応の根拠と共に挙げた上で」

 

「それに対するB市の反論として、本件条例の規定の内容や法令の趣旨目的などを手掛かりに、

本件不許可処分に当たって墓地の需給状況を考慮することは

裁量の範囲を超えるものではないことを論じ」

 

「B市の反論として、裁量判断としてB市内の墓地の供給状況を考慮することが許容される

…そのような裁量判断が許容される根拠として、

原則としてB市内で墓地を経営することができるのが公共団体であるとされていることや、

そのような制限が墓地の公共性や経営の安定性の要請に由来することを指摘出来ている」

答案はこう評価を得られたようである。

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