【司法試験】平成30年 公法系 第2問(行政法)設問1の(2)を出題の趣旨と採点実感から読み解く

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1 設問の確認

「B市長が本件申請に対して本件許可処分を行い、

D及びEが本件許可処分の取消しを求めて取消訴訟を提起した場合について」

「仮に、Eが上記取消訴訟を適法に提起できるとした場合、

Eは、本件許可処分が違法であるとして、

どのような主張を行うと考えられるか。

また、これに対して、B市はどのような反論をすべきか、検討しなさい」

 

2 DとEの本件申請に対して許可をしないよう求める旨の申入れの内容

② 本件事業所が本件土地から約80メートル離れた位置にあり、

本件条例第13条第1項の距離制限規定に違反する。

 

④ 本件墓地の実質的経営者は、AではなくCである。

 

3 【検討会議の会議録】

総務部長⑩(この数字は発言者に関係なく何回目の発言かという意味):

仮に原告適格が認められるとした場合、

本件許可処分の違法事由としてどのような主張がされるのかについて検討します。

…本日は、Eの立場からの主張のみを検討したいと思います。

 

〔検討すべき課題1〕

環境部長⑪:

Eは、まず、本件事業所がD所有土地に存在することで

本件許可処分は本件条例第13条第1項の規定に違反すると主張しています。

そのような主張がされた場合、本市としてはどのように反論するのか考えておく必要がありますね。

 

弁護士F⑫:

…また、本件においては、仮に、本件墓地の経営許可を阻止するため、

DとEが協力して本件事業所を意図的にD所有土地に設置したという事情があるならば、

このような事情を距離制限規定との関係で法的にどのように評価すべきかについても、

検討する必要がありそうです。

 

〔検討すべき課題2〕

総務部長⑮:

本件墓地の実質的な経営者が、AとCのいずれであるかは検討を要する問題ですね。

仮に実質的な経営者がCであるとした場合、法的に問題があるのでしょうか。

 

弁護士F⑯:

本件条例によると、墓地の経営者は、地方公共団体のほか、

宗教法人、公益社団法人等に限られています。

仮に本件墓地の実質的な経営者がCであるとすれば、

このような点も踏まえ、法や本件条例の関連諸規定に照らして違法となるのかについて、

注意深く検討する必要がありますね。

 

〔検討すべき課題3〕

総務部長⑰:

…また、以上のような本件許可処分の違法事由について、

Eがこれら全てを取消訴訟において主張できるかについても、

検討する必要がありますね。

 

弁護士⑱:

…Eが、自己の法律上の利益との関係で、

いかなる違法事由を主張できるかにも注意して検討すべきと考えています。

 

4 〔出題の趣旨〕

「論じられるべき第2の問題は、仮にEに原告適格が認められた場合、

本件許可処分が違法であるとして、Eがそのような主張をすることが考えられるか、

また、それらの主張が制限を受けることはないかである」

 

「〔設問1(2)〕では、Eが、本件許可処分に対する取消訴訟を提起できるとした場合、

本件許可処分が違法であるとして、どのような主張が可能か、

また、それらの主張が制限を受けないかを検討することが求められる」

 

「法第10条第1項に基づく許可については、

公益的見地からその拒否が判断され、行政に一定の裁量が認められる考えられる」

 

「どのような根拠に基づいて、いかなる裁量が認められるのか」

 

「さらに、本件許可処分が、どのような理由から裁量の範囲を逸脱・濫用し、

違法とされるのかについて、検討を進めることが求められている」

 

「Eが主張する違法事由としては以下の2点を論じることが求められる」

 

〔検討すべき課題1〕

「第1に、本件墓地から約80メートルの距離にあるEの事業所が

本件条例第13条第1項(2)の『障害福祉サービスを行う施設(入所施設を有する者に限る。)』

に該当し、本件条例第13条第1項の距離制限に違反することから、

本件許可処分は違法ではないかという点である」

 

「さらに、たとえ距離制限に違反していても、

Eが、Dと相談して、説明会や本件申請の後に事業所を移転している等の事情から、

本件許可処分を妨害するため、意図的に本件事業所を移転したとすれば、

権利濫用として、そのような違法事由は主張できないのではないか

という点も併せて論じることが求められている」

 

〔検討すべき課題2〕

「第2に、本件墓地の実質的な経営者は、Aではなく、営利企業のCではないのかという、

いわばAとCの間で一種の『名義貸し』に当たる行為が行われたのではないかという点である」

 

「法や本件条例には『名義貸し』を明文で禁止する定めは見られないが、

本件条例が、墓地の経営主体を地方公共団体や宗教法人等に限定し、

営利企業への墓地営業許可を認めていないことや、

経営主体に一定の要件を求めていることから、

仮に、本件許可処分が『名義貸し』によって認められたものであるとすれば、

法や本件条例の趣旨を潜脱して違法ではないかという主張を行うことが考えられよう」

 

「法や本件条例を踏まえて、

資料に示された具体的な事実を通して、

Eの主張を検討することが求められている」

 

〔検討すべき課題3〕

「さらに、本件許可処分の違法事由については、

Eの『自己の法律上の利益』に関係があるかどうか、

すなわち、行政事件訴訟法第10条第1項による主張制限についても

検討することが求められている」

 

「行政事件訴訟法第10条第1項の『自己の法律上の利益』の基本的な理解に基づき、

上で述べた各違法事由の主張が制限されるかどうかを、

個別に検討することが求められている]

 

 

5 〔採点実感〕

「本件許可処分がB市の裁量に基づくものであることを前提に」

 

「本件許可処分がB市の裁量に基づくものであることを

その理由とともに明示し」

 

「本件許可処分がB市の裁量に基づくものであることについて、

要件裁量、効果裁量の別を意識した論述」

 

「行政裁量が認められる実質的根拠について、

…教育や科学技術など一定の分野に関する専門家・専門組織の判断の尊重なのか、

政治的判断・公益的見地からの判断の尊重なのか、

全国一律で基準を定めるべきでなく地域の特性や地域住民の意見をしんしゃくすべきゆえに認められる裁量なのか

など、事案の特性を踏まえて少し適切な理由付けを考えて説明してほしい」

 

「裁量の根拠として、法第10条第1項や本件条例の規定との関係を論じている」

 

「行政裁量の存在は、行政処分等に何らかの『専門技術的』な性格が認められれば、

直ちに認められるわけではなく、

個別法の規定についても検討される必要がある」

 

〔検討すべき課題1〕

「①Eの事業所について本件条例第13条第1項の距離制限規定の適用がある

というEの主張を指摘した上で」

 

「DとEの関係から、権利濫用、信義則違反といった理由により

Eは距離制限規定の違反を主張できないとするB市の反論を論じ」

 

「Eの主張が権利濫用、信義則違反に当たると解する根拠となる

DとEとの関係に関する具体的な事情を詳細に述べ」

 

「DとEとの関係に関する事情を多面的に論じ」

 

「権利濫用につき、『阻止するため』『意図的に』『あえて』というような主観的目的のみ記載していて、

本件説明会(本件申請)後に設置したというような客観的事実の指摘がない答案が多かったが、

該当する事実を丁寧に拾うことが求められる」

 

〔検討すべき課題2〕

「②Cが本件墓地の実質的な経営者であり、

Aは名義貸しをした者であると言えるかどうか」

 

「Cが実質的な経営者であると解する根拠となる事情を

具体的かつ詳細に述べ」

 

「『名義貸し』について、なぜ『名義貸し」に当たるかにつき、

問題文や会議録に示された内容から…関係する点を挙げている」

 

「また、そのような行為が許されるものであるかどうかを検討し」

 

「名義貸しが禁止される実質的な理由について詳細に検討」

 

「名義貸しが禁止される実質的理由について本件条例の条文を複数挙げる」

 

〔検討すべき課題3〕

「③Eの①、②の主張について

行政事件訴訟法第10条第1項による主張制限の適用の有無が問題となる」

 

「行政事件訴訟法第10条第1項の判断基準について述べた上」

 

「Eの①、②のいずれの主張についても具体的な当てはめを検討している」

 

「行政事件訴訟法第10条第1項の主張制限の有無については、

…『自己の法律上の利益』が原告適格を基礎づける利益と同一であるのか、

又はそれより広範な利益も含まれるのかが問題とされていることを意識して論ずる必要があった」

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